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最高裁判所第三小法廷 昭和37年(オ)536号 判決 1965年12月21日

上告人

小保内きよゑ

右訴訟代理人

八島喜久夫

被上告人

折爪産業株式会社

右代表取締役

近藤重郎

右訴訟代理人

大川修造

永井一三

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人八島喜久夫の上告理由について。

論旨は、上告人先代亡小保内松次郎および被上告会社間の本件木炭出荷契約が旧臨時物資需給調整法に基づく木炭需給調整規則に違反して無効であると判断した原判決(引用の一審判決を含む。以下同じ。)には、単なる取締法規を強行法規と誤解した違法があり、また、かりに右木炭出荷契約が無効であるとしても、本訴立木についてなされた譲渡担保ならびに代物弁済契約の効力は別個に判断すべきものであるのに、右木炭出荷契約が無効であることから直ちに右譲渡担保ならびに代物弁済契約が無効であると判断した原判決には、審理不尽、理由不備の違法があるという。

しかし、上告人先代亡松次郎および被上告会社間の本件木炭出荷契約当時施行されていた臨時物資需給調整法は、わが国における産業の回復および振興に関する基本的な政策および計画の実施を確保するために制定され、同法に基づいて定められた木炭需給調整規則(昭和二四年農林省令七四号)は、右目的のため供給の特に不足していた物資である木炭の需給に関する事項を規定したものであり、同規則二条および一四条によれば、木炭の生産者はその生産する木炭をすべて集荷業者に譲り渡さなければならず、集荷業者でない者は生産者から木炭を譲り受けることができなかつたのであつて、右法令はいわゆる強行法規と解され、右法令に違反する行為は私法上もその効力を有しないものというべきである。

そして、原判決の確定したところによれば、亡松次郎は、本件木炭出荷契約締結当時法定の木炭集荷業者でなかつたところ、被上告会社との間に、被上告会社に対する原判示貸金の弁済方法として被上告会社から原判示のとおり木炭を出荷させることとし、右木炭出荷義務の担保として本訴立木を譲渡するとともに、被上告会社においてもし約定期日までに木炭出荷義務を履行しないときは亡松次郎が前記貸金の代物弁済として本訴立木の所有権を取得しうる旨約したというのであつて、原審挙示の証拠関係に照らせば、右認定判断は是認するに足り、前記のとおり木炭出荷契約が無効と解すべきものである以上、右木炭出荷義務の履行を担保するためになされた本訴立木譲渡契約ないしは右義務の不履行を理由とする本訴立木の代物弁済契約もまた無効と解すべきであり、これと同越旨に出た原判決は相当である。

その他論旨は、原審の認定にそわない事実を主張して、原審の適法にした証拡の取捨判断、事実認定を非難するに帰する。

従つて、原判決に所論の違法はないから、論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(下村三郎 五鬼上堅磐 横田正俊 柏原語六 田中二郎)

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